inumeshi20’s diary

楽しみ第一の自己啓発読者

わからないことの面白さ

”わからない”は良いこと

 

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(14歳からの哲学入門「今を生きるためのテキスト 飲茶 著 河出書房新社)

 ゲーム=不確かさ

 

この本はそれぞれの例が独立した面白さを持つ名作だ。

 

一つ一つ指摘しては終わらなくなってしまうので、一つだけ取り上げた。

 

 

 ジャンケンの説得力

 

それにしてもジャンケンの公平さは

改めて見ても大したモノだと思う。

事前に共謀されていなければ

こんなに不公平を作らないモノもない。

 

(”くじ引き”、”あみだくじ”もそうかもしれないが、

あれらは事前に仕組まれている危険がある)

 

一応説明すると、

ジャンケンはグー、チョキ、パーという三要素からできている。

 

歴史上、誰か特定の人物が思いついたり、

考えて練られたりしたものではないと思われる。

 

(誰かが考えたり、発明したなら、その記録が残されているはず)

 

 誰もが勝てるようにできる遊びはどんなものか、

人が三すくみのゲームを採用したと思われる。

 

この話題は、レビストロースという構造主義創始者について

作者が言及していた時、派生したものだ。

(それほど作者が言及していたわけではないが、

私には考えさせられる場面だった)

 

”わからない”の登場

 

 ジャンケンがだれでも勝てるようにするためには、

分からない”という要素が必要になった。

 

仮に、チョキとパーだけでは勝負にならず、

(誰もチョキなど出さないからだ。

脅迫されたら別だけど。)

 

三すくみではなく、四すくみでは”あいこ”になる確率が増えて、

時間がかかりすぎて決着がつかない。

 

(4つめの要素は中々思いつかない。

例えば、親指と一刺し指で丸を作るような?)

 

分からない”も適量にしなくてはスムーズにゲームが進行しないのだ。

 

構造主義について

 

レビストロースは、未開な地に住む、非文明的な種族が、

(あくまでも先進国人から見ての)

組織を繁栄させるために、

高度に設計された制度を採用していたことを発見した。

 

同性兄弟、姉妹の子供同士(平行いとこ)は結婚できないが、

異性兄妹、姉弟の子供同士(交差いとこ)は結婚できるように。

 

後者はものすごく確率が低いことが分かる。

 仮に、そういうまれな家族がいても、

身内同士で結ばれることは

よその家族達の視線が気になり

ためらわれるだろう。

(ひょっとしたら、同族婚を嫌うような

おとぎ話や逸話が触れ回っているかも)

 

もちろん、これは同族同士で結ばれないように

予め仕向けられているからだ。

ある家族が他のそれらと結ばれれば、

部族同士どんどん交流が深まる。

引いては、社会が発展していくのだろう。

 

こういった発見の前は、

 

「人には自分達が持っている能力が

生きていくのに必要なアイデアや発明を生み出した」

という考えがあったが、そうではなく、

 

「もともと世界には、ものごとをうまく機能する仕組みがあって

たまたま人間達がそれを利用した」

という結論に落ち着いた。

 

前者の人間の能力全能的な説は、

レビストロースの前に実存主義が流行っていて、

そこで支持されていた考えだ。

後者は構造主義の考え方。

 

(もちろん、この構造主義も、次の哲学者ヴィトゲンシュタインによってひっくリ返されるが、そのことはここでは言及しない。

もともと哲学とは、先人達の考えに異議を唱えたり、もっと洗練された考えを提案し続けていくものらしい)

 

同意も反対も・・・

 

この「14歳からの哲学入門」は、

ある年齢に達した人が、

全服従、もしくは、あらゆるものに反抗の

どちらの姿勢も取れない人が

もっとマシな方策はないのかと思った時に

行き着く本なのだ。

 

一見、人との交流を避けているような姿勢だが、

物事を徹底的に考え、

自分に無理なく利用、応用できるように選ばれた哲学の数々は

その人を無意味な対立、服従を避けるための

指標となるだろう。

 

確かに中学性、高校生くらいの人達には一番効き目があると思う内容だ。

もっと多くの学校や家庭でこの本や、そこから来る考えを

採用された良いのにと希望する。